研究概要 |
ヒトヨタケの野生型及び細胞骨格突然変異体を用いて解析を行い,次のような実験結果を得た. 1.子実体内で伸展成長を行う菌糸細胞について,微少管の分布を電子顕微鏡により調査した.その結果,細胞質微少管が,主として細胞長軸に平行に走っているのが観察された.しかし,植物で知られているような表層微少管は観察されなかった. 2.分裂装置の星状体の形成が阻害されるβ-チューブリン変異株(BEN198)を用い,二核菌糸内の対合分裂における核の移動・定位および隔壁形成における星状体の役割について調査した.その結果,星状体は分裂核の移動・定位に直接関係しないが,隔壁形成の位置の決定に関与していることがわかった. 3.β-チューブリン変異をDNAレベルで解析するための一環として,野生型のβ-チューブリン遺伝子のクローニング及び全塩基配列の決定を行った.その結果,この遺伝子は445個のアミノ酸をコードし,8つのイントロンをもつことなどが示された. 4.二核菌糸内の対合分裂の前期に,2つの核のまわりにアクチン繊維が集合することが発見され,対合分裂における核の移動・定位にアクチンが関係していることが示唆された. 5.サイトカラシンE(CE)耐性変異株についてウエスタンブロッティングによる解析を行った.その結果,変異によってCEに耐性を与えうる遺伝子cer1はアクチンをコードしていることが強く示唆された.
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