研究概要 |
1。蛍光色素DiOC_6(3)とDAPIを用いて出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeのミトコンドリアとミトコンドリア(mt)核様体の二重染色を行い、このオルガネラの動態について詳細に解析した。その結果、酵母の全生活環(栄養成長、胞子形成、接合、発芽)の様々なステージでミトコンドリアの融合と断片化が起こっていることを明らかにした。 2。S. cerevisiaeのmt核様体をDNase処理や高塩濃度処理により解体し、DNA結合タンパク質を分離した。mtDNAとDNA結合タンパク質によりmt核様体に似た粒子構造を再構成できるを示し、分子量67kDa, 52kDa, 50kDa, 38kDa, 30kDa, 20kDaのタンパク質がmt核様体形成に関与していることを明らかにした。このうち、67kDaタンパク質については、ポリクローナル抗体を作製した。 3。酵母Pichia jadiniiをはじめPichia, Williopsis属酵母からmt核様体を単離し、mt核様体のタンパク質構成をS. cerevisiaeと比較した。電気泳動による比較とイムノブロットの結果、酵母では種によってmt核様体タンパク質組成、分子量にかなりの多様性がみられることが示唆された。 4。酵母栄養成長、胞子形成過程におけるミトコンドリアとmt核様体の動きのメカニズムを探るために、Rhodamine-phalloidin染色によりアクチンの細胞内分布との関連を調べた。その結果、胞子形成過程でネットワーク状につながったmt核様体と重なる位置、もしくは紐状mt核様体の末端にアクチン斑点が高頻度でみられることを明かにした。このことは、アクチンがミトコンドリアの細胞内配置に関与していることを示唆している。
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