研究概要 |
1.日本列島に広く分布するヒメギス属は、旧北区東部から広く見られるもので、従来Metrioptera属に属するとされていたが,この地域のものはそれまでの亜属のひとつEobianaに相当すると考えられ,しかもこれを属レベルに扱うことが望ましいと考えられたので,これを独立属として認めた。この属にはイブキヒメギスとengelhardtiの2種が含まれていて,後者にはシベリアヒメギスとヒメギスの2亜種が含まれると結論づけ、これらの属、種,亜種の記載をそれぞれ行った。 2.本州に分布するキリギリス類のうち,広く分布するヒメツユムシ属Leptoteraturaはalbicorne,すなわちヒメツユムシ,1種があるが,本属の雄は特異な外部生殖器をもつことによって、琉球列島に産する国属のものとは系統を異にするように思われる。そしてこの系統が中国大陸に由来をもつであろうと推定していたが(Yamasaki,1982),フィラデルフィアの自然科学アカデミーにあるXiphidiopsis omeiensisを検したところ,ヒメツユムシalbicornisそのものであることがわかったので,日本のものとその後に得られた中国産の材料を比較し,あわせて東南アジアの本属の種分化について仮説を提出した。これで琉球列島の異起源と思われる本属の種の起源が問題になってきた。 3.日本産EobianaとLeptoteratura2属の日本への侵入ルートを考察した。それによれば、ヒメギスEobiana engelhardti subtropicaは明らかに大陸側のE.engelhardti engelhardtiから分れた島嶼型で、北海道経由,本州へと侵入した。一方,イブキヒメギスEobiana japonicaはヒメギスから分化したとも、朝鮮半島から九州を経由して侵入したとも考えられ,今後、朝鮮半島の調査が必要と考えられた。本州産ヒメツユムシLeptoteratura albicorneは同種が中国大陸で確認され,亜種の問題もあるが,明らかに朝鮮半島経由といってよいと思われる。
|