研究概要 |
精子束が群体性のオオヒゲマワリ科とゴニウム科の中で、どの様な系統的道筋で進化してきたかを解析する為に両科の各種の系統関係を形態的形質を基にした分岐系統学的解析より推測した。その結果の厳密合意樹はオオヒゲマワリ科の中でYamagishiella様の同型配偶の生物が精子束を獲得して異形配偶・卵生殖のEudorina, PLatydorina, Pleodorina, Volvoxから成る単系統群を進化させた事を示唆した。更に、葉緑体のrbcL遺伝子を系統解析のマーカーとして、群体性オオヒゲマワリ目の分子系統樹を作成した。その分子系統樹は、異形配偶・卵生殖のオオヒゲマワリ科の多くの生物が構成する単系統群の存在を高い信頼度で示唆した。また、Eudorina elegansがその中で最も原始的である事も解析された。この事は形態による系統解析結果と基本的に一致し、E. elegansが保有する精子束に関する遺伝子群がオオヒゲマワリ科の中の異形配偶の生物の最も原始的状態に近いものである事を示唆する。従って、精子束に関する遺伝子群の系統解析にはYamagishellaとEudorinaを比較研究するのが適切と考えられた。 Yamagishiella様の生物からEudorinaの精子束形成に関する遺伝子群をディファレンシャルスクリーニングで探索する事が必要と考えられた。この為にEudorina elegansの雄株を大量に培養して、精子束を発現させる実験系を確立した。温度25℃の培養庫と大型フラスコの中で通気を行い、Pleodorinaの接合培地(Nozaki et al. , Phycolohgia 28:252-267,1989)を用いる事によって約20%の細胞が精子束に誘導された。この培養細胞と通常の栄養細胞だけからなるものからmRNAを抽出・比較研究する事により、精子束発現により誘導される遺伝子群の実体が明らかになるものと思われる。
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