研究概要 |
本研究の目的は、イオンビーム衝撃に伴うスパッタリング現象の初期過程、特に多元合金系における表面組成変化の様子をレーザ共鳴電離法を用いて明らかにすることである。 本年度の研究内容は以下のとうりである。 (1)過渡現象を追跡する上で初期状態が明確に定義された表面を試料として用いる必要がある。そこで準備段階として(Au,Ag)/Si(111)の2次元合金系において形成される超格子構造の熱的安定性、構造相転移等について研究を行った。その結果、Si(111)-5XI-Au表面にAgを蒸着すると√<3>×√<3>-(Au,Ag)構造となるが、Si(111)-√<3>×√<3>-Au表面にAgを蒸着すると、θ_<Ag>≦0.6では√<21>×√<21>R±10.89^0-(Au,Ag),またθ_<Ag>≧0.6では2√<3>×2√<3>-(Au,Ag)となること、等が明らかとなった。 (2)昨年度報告したレーザ共鳴電離法における線形応答理論において不明瞭であった点,即ち連続的な関数を離散化する手続きの部分を明確に定式化した。これにより実際のデータ解析に必要な窓行列の行列要素の計算手順を具体的に示すことができた。 (3)イオン照射による多元合金系の表面組成変化の一例としてN^+_2イオン照射によるT:N単結晶薄膜の形成初期過程を調べた。その結果、薄膜成長方位は、Ti/N^+_2比により制御されうること、また形成された膜においてTiN(001)面よりもTiN(111)面の方が原子スケールで平担な表面となることが明らかとなった。
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