研究概要 |
本年度は次の項目について研究を行った。(1)レーザスペックルを得るための光学系の設定および画像処理システムの構築,(2)レーザスペックルの強度分布の評価法の考察,(3)材料の表面性状とスペックルの強度分布の関係の観測,(4)金属材料の疲労による表面性状の変化とスペックルの強度分布との関係の検討。 (1)出力5mW,ビーム径1mmのHe-Neレーザを用いて材料表面に照射し,前面に置かれたすりガラス上にスペックルパターンを形成する。そしてスペックルパターンをCCDカメラを用いて画像処理システムに入力し解析を行う。画像処理システムとしては32ビットの高速CPUを持つ画像処理ボードをパーソナルコンピュータに装着したものを用いた。 (2)レーザスペックルの強度分布の評価法として,強度分布の重心位置を中心とした一定半径内の輝度データと全画面の輝度データとの相関関数を求め,半径方向の分布の1/4価幅を用いて強度分布を評価することによりばらつきの少ない結果が得られることがわかった。 (3)金属材料の表面についてエメリーペーパで研磨した場合と塑性変形を加えた場合について表面性状とスペックルの分布との関係を調べた。その結果スペックルの強度分布は表面あらさには必ずしも対応しておらず,表面の断面曲線の周波数の統計的分布と対応して変化することがわかった。 (4)鉄鋼材料の試験片に一定振幅の繰返し荷重を加えた結果,繰返し数の増加につれて表面のすべり帯の密度が増加することがわかった。そして,すべり帯の密度の増加に対応してレーザスペックルの強度分布が広がっていくことがわかった。スペックルの広がりは繰返しの初期に比較的変化が大きくその後変化が少なくなった後,破壊の前に再び変化が大きくなる傾向があることがわかった。繰返し数に対するスペックルの強度分布の変化の割合は応力振幅が大きくなるほど大きくなることがわかった。この現象を用いて疲労損傷の度合を非接触で検出できる可能性があることがわかった。今度疲労損傷の評価法を導くことと,損傷とスペックルの強度分布との間の関係をさらに詳細に調べる必要があろう。
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