研究概要 |
ダイヤモンド合成や単結晶育成に用いられている高圧装置は,外力方式であるために,圧力媒体を必要とし,構造上摺動部が存在するので圧力の発生には摩擦力が伴う.そのため,装置の大型化に見合った大きさの高圧領域が得られていない.熱膨張拘束による高圧装置は,内力方式であり,大型プレスや圧力媒体を必要とせず摺動部がないので,構造が単純で大型化が容易であると同時に,高圧発生には摩擦力を伴わないので,大型化に見合った大きさの高圧領域が得られると期待できる.本研究は,熱膨張拘束による高圧装置の単結晶育成装置としての可能性について検討するとともに,単結晶育成に必要な長時間の安定した高圧維持に不可欠である連続的な圧力監視システムの提案とその検討を行い,次のような結果を得た.1.拘束力の測定による圧力監視システムによって発生圧力をほぼ正確に測定できることが,鉛およびアルミニウムの融点の圧力依存性を利用する圧力測定により確認された.2.熱膨張拘束による高圧装置によりダイヤモンド合成可能な高圧が維持できることが,上記圧力監視システムを用いて示され,実際にこの装置によるダイヤモンド合成がX線回折により認められた.3.本圧力監視システムを用いてダイヤモンド合成可能な高温高圧領域においても圧力が推定できることが分かった.4.熱膨張拘束による高圧装置は高圧室の大型化が容易であり,ダイヤモンド合成可能な高温高圧を発生できると共に,長時間の安定した高圧維持するために不可欠な連続的な圧力の監視が可能であることから,単結晶育成装置として適している.今後は,単結晶育成に適した試料構成を提案していくと共に,拘束力による圧力監視システムの測定精度についてさらに検討を進めていく予定である.
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