研究概要 |
生産設備の保全管理を目的として,劣化の定性的予測を行うシステムの開発を試みた.まず,劣化過程を基本劣化メカニズムの連鎖として表現する方法を検討した.劣化を引き起こす要因としては,部品の形状,材質,表面性状,対偶関係,負荷,環境条件等の項目が考えられるが,これらをクラス階層の形式で分類整理する枠組みを作った.また,疲労,摩耗,腐食といった基本的な劣化メカニズムを,その生起条件となる特定の要因の組み合わせによって表現することにした.さらに,要因が別の要因を生み,その結果劣化メカニズムが生起するような場合に対応するために,振動発生,応力集中と言った要因を生起するメカニズムを劣化メカニズムと同様の形式で表現できるようにした.これらの表現要素を接続することによって劣化過程を表現する方法を開発した. 次に,劣化メカニズムと要因の類似度を,それらのクラス階層関係を基に定義する方式を用い,それに基づいて事例間の類似度を計算し検索する方法を考案した.さらに,事例修正のための仕組みとして,部品の記述に基づいて,そこで生起する可能性のある劣化過程をデータベース中に定義された劣化メカニズムと要因生起メカニズムをもとに推論する方式を考案した. 以上の考え方に基づき,ワークステーション上で動作する対象指向エキスパートシステム構築ツールを用いて,劣化事例ベースシステムを構築した.実現された機能としては,事例入力機能,事例検索機能,部品レベルの劣化過程推論機能である.データベース中に劣化メカニズム14種,要因生起メカニズム16種を定義した.実際に機械部品加工工場の保全記録を基に劣化事例約40例の記述を行い提案した方法の妥当性を確認した.
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