研究概要 |
本研究では, SCM415浸炭焼入れ,S45C調質, 2種類のADI(オーステンパ球状黒鉛鋳鉄, ADI1:オーステナイト化温度T_A=875℃,恒温変態温度T_I=375℃, ADI2: T_A=875℃, T_I=235℃)およびSACM645イオン窒化歯車に対して,パルセ-タ試験機を用いて曲げ疲労試験を実施し,曲げ疲労過程のAE波形, AE事象計数総数, AE事象計数率, AEエネルギー総数, AEエネルギー率, AE振幅分布の測定,疲労き裂の観察とき裂長さの測定, AE波形の周波数分析を行って,これらの歯車の曲げ疲労損傷のAE特性について明らかにするとともに, AEによる曲げ疲労損傷の予知について検討を加えた.ソノ結果,得られた主な点は以下の通りである. 1.歯車の曲げ疲労過程におけるAE事象計数総数, AEエネルギー総数は,浸炭焼入れおよびADI1歯車の場合には,き裂発生直前から急激に増加し,き裂発生まで増加し,き裂の進展中はほとんど増加しなくなる.イオン窒化歯車の場合には,これらのAEは同様な変化を示すが,浸炭焼入れやADI1歯車の場合ほど急激な増加は認められない. ADI2歯車の場合には,これらのAEはき裂発生からかなり遅れて増加する. S45C調質歯車の場合には,き裂の発生によるAEの変化ははほとんど認められない.これらのAEによる曲げ疲労損傷の予知は,浸炭焼入れ, ADI1およびイオン窒化歯車の場合には可能であるが, ADI2および調質歯車の場合には困難である. 2.歯車の曲げ疲労過程のAE波形の振幅は,イオン窒化,浸炭焼入れおよびADI1歯車の場合には,疲労過程の初期には小さいが,き裂発生直前および直後にはかなり大きくなり,き裂の進展中は小さくなり,破断直前に再び大きくなる. ADI2歯車の場合には,き裂発生後遅れて大きくなる.調質歯車の場合には,振幅の大きなAEは,ほとんど認められない. 3.歯車の曲げ疲労損傷のAE波形の最大振幅は,イオン窒化,浸炭焼入れ, ADI,調質歯車の順に小さくなる.
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