研究概要 |
代替フロンHFC134a雰囲気中での摩擦磨耗特性を,往復動試験機による一定荷重昇温試験を主体に調べた.潤滑油としては,HFC134aと相溶性のあるポリアルキレングリコールPAG,ポリオールエステルPOEおよび相溶性はないパラフィン系鉱油を基油とし,添加剤としてはアリール系リン酸エステルTCP,アルキル系リン酸エステルTOP,有機モリブデンMoDTCを使用下.その結果を以下に示す. 1.HFC134aは鋼表面に反応し,フッ化物を生成し摩擦磨耗特性を改善する. 2.摩耗特性は,全般的にみて,PAGがPOE,P150に比べて優れている.しかし,POEは転移温度(約150℃)以下では摩擦係数が最も低く,磨耗も殆ど生じないが,転移温度以上で摩擦,磨耗が急増する.PAGの摩擦は低温度域でも0.1程度と大きく,130℃付近より増加傾向を示す. 3.TCP添加はPAG,P150では摩擦面にリン酸鉄を形成し,摩擦磨耗特性は改善するが,POEでは基油自体の極性が強く,TCPの表面への吸着を妨げるので添加効果は認められない.TCPに比べて吸着能力は低いが反応性に富むTOPの添加は殆ど効果がない.MoDTCは摩擦面にMoS2を形成することにより,摩擦磨耗特性を著しく改善する.しかし,銅と存在は油の劣化を促進する. また,光干渉法によりHFC134a雰囲気での往復動下の油膜形成状態を調べた.HFC134aと相溶性のあるPAG,POEの場合には,HFC134aの溶解基油中への溶解に伴い油膜厚さが急激に低下し,油膜破断を引き起こすので,摩擦磨耗特性の改善には,高粘度のPAG,POEの油膜形成能力に依存するのは危険であり,基油自体および添加剤に境界潤滑能力,極圧潤滑能力の高いものを使用することが必要である.
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