研究概要 |
AI合金複合材料の腐食性環境中摩擦・摩耗特性を詳細に知るため,湿り空気中,イオン交換水中,食塩水中,マシン油中で一方向及び往復すべり摩擦・摩耗試験を行った.AI合金AC8A材,これを基材とするアルミナ短繊維強化材及び中空シリカ粒強化材とステンレス鋼の組合せによる一方向すべり摩耗試験結果から,中空シリカ粒材では湿り空気中のシビヤ摩耗率は高荷重下でシリカ粒が破壊するため他の材料と較べて高いが,低荷重下では粒子の荷重分担のためマイルド摩耗率は低く,耐摩耗性が改善される.イオン交換水と食塩水中のシビヤ-マイルド摩耗遷移荷重は湿り空気中より約10倍高く,マイルド摩耗率もAC8A材と同程度で,強化材の害作用が見られない.アルミナ短繊維材では,湿り空気中のマイルド摩耗域で耐摩耗性がAC8A材に較べて改善されるが,高荷重では強化材の破片がアブレシブ作用を示すため,いづれの環境でも他の材料と較べて耐摩耗性は悪い.水溶液中ではAC8A材と較べて耐摩耗性が低下し,強化材の害作用が見られる. 上記材料対軸受鋼球の組合わせによる往復摩擦・摩耗試験結果から,湿り空気中では両複合材料とも低荷重で耐摩耗性に優れているが,高荷重ではAC8A材の耐摩耗性と大差がなく,鋼球の摩耗も大きい.マシン油中では,アルミナ短繊維材の耐摩耗性は他の材料と較べて非常に良く,高荷重でも摩耗の増大は僅かで,鋼球の損傷も小さい.中空シリカ粒材は低荷重でアルミナ短繊維材と同等の耐摩耗性を示すが,高荷重ではシリカ粒が破砕して摩耗が急増し,破片が鋼球の損傷を促進する.3つの材料ともマシン油中の摩擦係数μは低荷重域で0.05程度,荷重と共に増加して50N以上でほぼ一定の0,1前後になる。湿り空気中のμは0.5-0.9程度で、AC8A材,アルミナ短繊維材,中空シリカ粒材の順に高くなる.これは接触面に象眼された強化材の破片による掘り起こし作用が摩擦抵抗になるためと考えられる.
|