研究概要 |
本研究では,ヒートパイプにより構成された熱放出・熱除去の作用をもつ熱スクリーンを境界層型の対流系に設置すると,対流系の温度分布が変化し,浮力の変化がもたらされ,対流制御が可能となること,またその際のスクリーンの透過率,設置位置,温度レベルの影響を明らかにした. 1.鉛直加熱壁に沿う自然対流の制御:実験において,作動流体を空気とした鉛直加熱壁に対し,熱放出・熱除去の作用をもたせた熱スクリーンをこの加熱壁に平行に設置すると,温度境界層は,熱スクリーンのない場合と比較して熱スクリーン温度レベルが境界層外の周囲温度に近づくほど薄くなり,加熱壁の温度に近づくほど厚くなる.熱伝達特性は,温度レベルが境界層外の周囲温度に近づくほど伝熱が促進され,加熱壁温度に近づくほど抑制される.またこの伝熱促進・抑制の効果は設置位置を加熱壁に近づけるほどより顕著になるが,二次元数値解析から,ある程度近づけばその効果は飽和することが確認された.また数値解析からは,熱スクリーンの熱的効果が境界層への吸い込み温度あるいは境界層離脱流体温度に影響し,浮力の変化から対流の加速ないし減速作用が生じていることが確認された. 2.集中線熱源からのプルームの制御:実験において,作動流体を空気とし,直径0.5[mm]の白金線の上方に熱スクリーンを設置すると,熱スクリーンの透過率が小さい場合,プルーム幅が広がり,また最大幅の位置がスクリーンの下方にシフトする.透過率が大きくなるとプルーム幅の広がりの程度と熱的効果は小さくなる.またスクリーンの温度レベルを変化させると,プルームの揺動を抑制または促進させ得ることが確認された.数値解析からもスクリーンの透過率の変化によって熱抽出量,プルーム構造が変化することが確認された. 以上のことから,熱スクリーンを境界層型の対流系に設置すると,熱スクリーンの温度均一化作用により,対流系の温度分布が変化し,浮力の変化がもたらされ,対流制御が可能となる.
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