研究概要 |
トランスピュータを用いて,熱伝導方程式の並列演算によって高速化する手法を研究した.並列処理においては,演算素子の個数に反比例して計算時間が短縮されることが理想的であるが,実際には,素子間の通信時間等のロスが発生するため,効率的な並列化のアルゴリズム,各プロセッサ間のデータ転送の最適化,反復回数のより効果的な収束方法等の基礎手法を研究し,並列演算に影響を及ぼすパラメータとして,格子点の計算時間と通信時間の比が重要であるという知見を得た.トランスピュータを用いた並列計算機によって築いてきた並列化手法を参考にして,並列計算機としての結合形態や構成上の自由度がより大きいワークステーション結合方式による並列処理によって,伝熱数値シミュレーションを実施した.伝熱数値シミュレーションとしてポアソン方程式を対象に,領域分割法を用いて計算領域を分割し,各ワークステーションに割り当て,負荷分散,相互通信方法が並列計算効率にどのように影響するかを検討した.データ通信に関してはトランスピュータによる並列処理とワークステーションによる並列処理とでは大きな差異があるという数値実験結果を得,ワークステーションの並列化では,通信の効率化が最も重要な問題点となることを示した.ついで,ポアソン方程式の数値解析手段としてSOR法(加速緩和法),レッドブラックSOR法を速度向上率や計算効率により比較し,並列計算に適した解法は,レッドブラックSOR法であることを見いだした.つぎに,数値解析手法の開発,計算スキームの特性の確認のためにしばしば用いられる二次元キャビティーフロー問題の並列化を行い,圧力ポアソン方程式の解法には前の結果に基づいて,レッドブラックSOR法を適用した.その結果ワークステーション・クラスタによる並列計算では,比較的大規模な計算に有効であることを見出した.
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