研究概要 |
1.熱流束変動の測定手法について きわめて浅いところに埋め込んだ熱電対で得られる温度から熱流束変動を計算する方法を採った。温度測定で積分型の電圧計を用いると,電源によるノイズが振幅で0.02℃程度と低く,本研究では300Hz程度,熱電対の埋め込み方を工夫すれば1kHz以上のかなり高速な熱流束変動を捕ら得ることが判明した。 2.遷移沸騰高過熱度域における熱流束変動の特徴について 水の定常遷移沸騰時における熱流束変動測定から次の事項が明らかになった。 (1)標準的な熱流束を伝える状態から周期的に熱流束が急激に立ち上がる変化となる。 (2)標準的な熱流束は過熱度の増加に対し減少し,過熱度100K程度以上ではほぼ一定値となる。 (3)熱流束は基本的には8ミリ秒程度の周期を持って立ち上がるが,場合によってそのところどころが抜けて立ち上がりの間隔が空くという変化のパターンを持つ。また,過熱度の増加にともない,立ち上がりを生じない割合が増す。立ち上がりの平均的な周期は,過熱度120K程度以下では基本周期の2〜3倍でほぼ一定,それより高過熱度では過熱度の増加にともなって長くなる。 (4)立ち上がっている時間は過熱度の増加にしたがって減少する。 (5)立ち上がり1回当たりの伝熱量は過熱度の増加に対して急速に減少する。 以上のことから,何らかの原因で8ミリ秒程度の周期で液体が伝熱面に接近し,そのいくつかが伝熱面に衝突して熱を奪うという状況が想定できる。 3.限界熱流束点近くの熱流束変動の特徴について 小熱容量・定温伝熱面によって測定されていた,核沸騰によって高い熱流束が伝えられる状態と乾燥によって熱流束が落ち込む状態が周期的に繰り返されることが再確認された。
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