研究概要 |
本研究は,ER流体を振動制御用マウントに適用し,微小振幅から大振幅の振動まで,複数の振動モードを単一のマウントで制振することを目的とする.ER流体は,加える電場の強さで見かけ上の粘度を変化させることが可能な特殊機能性流体で,本研究はその応用研究の一つである.まずER効果の力学的相似則を明かにすることで本防振マウントが適用可能な対象物を明かにする.さらにニューラルネット制御系と組み合せて制振実験を行い,制振性能を確認する. 以上の目的を踏まえて,ER流体を用いたマウントに関して振動振幅依存性を明らかにした.ER流体が外部電場の下で流体の降伏応力を変化させるメカニズムは,電極間に形成される流体中に分散されている粒子による鎖状のクラスタがせん断変形に対して抵抗を示すことであるので,電極間隔およびその振動振幅に依存する.マウントに適用した状態でその依存性の程度を明らかにした. さらにER流体を用いた防振マウントの特性を把握した上で,制御系の設計を行った.従来の研究から,本防振マウントは周波数,振動振幅温度等に関して非線形性が強く,また経時変化を伴うので,ニューラルネットワークを利用した.ニューラルネットワークは非線形写像を表現することが得意である上に学習能力があり,経時変化にも対応できる.本研究で用いるニューラルネットワークは制御機構のほかに同定機構も持っているので.いわゆる適応制御系である.欠点として学習に時間がかかること,および学習精度が悪いことなどが挙げられているので,その改善を目的として,新たな学習法の開発を行った.学習法としては疑似逆行列を用いた簡易学習法の開発,および最適化問題に対して大局的最適解を求めるために開発されたTabu探索法を用いた高精度でしかも高速な学習法を開発した.
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