研究概要 |
微小スケール系における種々の物体のアクチュエーションやマニピュレーションは,「マイクロマシン」や「バイオテクノロジー」の分野における重要な要素技術である.マニピュレーションの対象物が,動植物細胞のような大きさが10μm以下でしかも破壊しやすい物体の場合,非常に精密な力の制御が要求され,これまで提案されているような機械的マニピュレータでは限界がある. 本研究者らは、VHF帯超音波を用いて微小な物体を操作する新しいマニピュレーション技術を提案し、種々の構成法を検討している。本研究では、高結合圧電基板上の圧電表面すべり波と呼ばれる圧電基板の表面に平行な横波変位だけをもつ特殊な弾性表面波に付随する準静電波の静電力を力の駆動源に利用したマニピュレーションの可能性を追求し、以下のような成果が得られた。 1.微小物体のアクチュエーションに適合する圧電表面すべり波について種々検討し、64°YX LiNbO_3基板を伝搬する圧電表面すべり波を利用することとした。そして、この波について、伝搬路に周期的摂動が与えられた場合の伝搬特性を理論的に解析した。また、この波を効率よく一方向性励振するすだれ状電極トランスジューサについて理論的・実験的に検討した。 2.超音波マイクロマニピュレーションの実験のために、新たに顕微鏡観察システム、専用のメカニカルステージ系、トランスジューサを駆動する電子回路系を設計し、ほぼ完成させた。 3.現在,すだれ状電極の周期が40μmで、動作中心周波数110MHzのマニピュレータの試作とこれを用いた微小SiO_2ガラス球やポリスチレン球などの1次元移送実験が進行中である.
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