研究概要 |
本研究は,マイクロマシン用構造材料としての利用が予想される各種薄膜に対して,その摩擦係数の温度依存性を測定することを目的としてなされた。マイクロマシンの使用環境は多岐にわたると考えられ,温度条件が変化した場合でも安定な動作をすることが望まれる。以下に今年度の研究成果の概要を示す。 マイクロマシン用構造材料として最も良く用いられるシリコンは表面温度の上昇と共に見かけ上の摩擦係数が大きくなり,100℃以上の高温領域では安定な動作が望めないことが分かった。また,一度温度上昇に伴い摩擦係数が増加すると再び温度が低下しても摩擦係数は元の小さな値には戻らず,高い値を保ち続けることが明らかとなった。この原因としては、シリコン表面のOH基による結合力が温度上昇と共に大きくなり,見かけ上摩擦係数を大きくすることがあげられる。このような摩擦係数の温度上昇に伴う増加を防ぐ手段として,本研究ではシリコン表面にAIやSIO_2薄膜を付着させる実験を行った。その結果,いずれの薄膜においても50nm程度の膜厚でシリコンで見られた摩擦係数の温度上昇に伴う増加を抑えることができ,また,摩擦係数の値もシリコン間の値より小さくできることを明らかにした。
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