研究概要 |
最初に,基本的な実験としてER流体インキの流れを制御するための電界についての基本的な実験を行なった.これより,インキの制御には交流電界を用いるのが適切であることが実験的に確かめられた.次に,ERFインクジェットの理論的な解析を等価粘性長と等価慣性長の概念を用い,矩形断面を持つ流れの問題に帰着させる方法で行なった.これから運動方程式を求め,インキチャンバ内のインキ速度の計算が可能となった.さらに,理論モデルから導かれたインキの量と,実際にノズルから噴出したインキの体積の間には良い一致がみられ,理論モデルの正しさが実証された.記録速度の上限を与えるERFの応答速度の測定を最初に試みた.このため,流体を平行平板電極間に一定速度で流し,電界をオン・オフしたときの上流側での圧力変化を測定する方式の実験装置を試作した.この装置では1ms程度の応答が測定可能である.この実験により,ERFの応答速度は1msから数1msであることが明らかになった.コンピュータ等の出力装置としてこのインクジェット方式を用いる場合,ノズル径を小さくして微細なインキ滴を形成する必要がある.従来のERFインクジェットではノズル径が300μmと比較的大きかったため,用途は建築物の外壁塗装、マ-キングなどに限定されていた。そこで、50μm程度の微細ノズルインクジェットを実現するため,分散媒がサブミクロンのERFを試作し,その剪断応力特性および応答特性の測定を行なった。この結果サブミクロンの分散媒を用いてもそれほど大きな剪断応力の減少や応答速度の低下がみられないことが明らかになった. 以上の研究成果よりERFインクジェットが実現可能であり,また,そのために必要な基本的なERFの特質,印加電界の大きさなど,基本的な特性の把握がなされた.
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