研究概要 |
本研究では、ディジタル磁気記録システムの高密度化を信号処理の面から達成することを目的として、高密度ディジタル磁気記録系に適合したパーシャルレスポンス(PR)方式を組織的に検討し、従来方式のうちで最良の特性を有するPR(1,1,-1,-1)方式(EPR-IV方式)に比べて、更に高密度記録が可能なPR方式の検討を行なった。 まず、高密度ディジタル記録系に適合したPR方式の伝達特性をビット間隔T_bの遅延を表す遅延演算子Dを用いて表すと(1+D^l)^n(1-D^m)(l,m,nは整数)と表すことができる。このようなPR方式についてビットごとの復号法の場合の識別点SN比を求めた。その結果、PR(1,1,0,-1,-1)方式が最良の特性を示し、次いでPR(1,2,1,-1,-2,-1)方式、PR(1,1,0,0,0,0,-1,-1)方式、PR(1,1,-1,-1)方式の順となることが明らかとなった。 次いで、ビタビ復号法を組み合わせたPRML方式を用いた場合のSN比の改善度を求め、これを考慮してPRML方式の識別点SN比を求め比較検討した。その結果、PR(1,2,1,-1,-2,-1)方式が最良の特性を示し、次いでPR(1,2,1,0,-1,-2,-1)方式、PR(1,2,0,-2,-1)方式、PR(1,1,-1,-1)方式の順となることが明らかとなった。 更に、復号器入力雑音のサンプル値間の相関も考慮に入れたPRML方式の誤り率特性を求めた。その結果、PR(1,2,1,-1,-2,-1)方式によるPRML方式の採用により、従来のPR(1,1,-1,-1)方式による場合と比べて誤り率が約2桁改善できることが明らかとなった。 なお、上記の研究は記録媒体の走行方向に記録する長手磁気記録に関する研究であるが、現在媒体面に垂直の方向に記録する垂直磁気記録にPRML方式を適用した場合についても検討中であり、興味ある結果が得られるものと期待できる。
|