研究概要 |
本研究は,波長に比して薄い薄膜(超薄膜)を高さ方向に多層に積むことによりTEとTMのスラブモードの伝搬定数を大きく縮退分離させた上で、横方向に光電磁波を閉じ込める層構造を工夫して単一動作または偏波面保持動作を期待した3次元光導波路を光平面回路理論により解析し,対応した回路を作製・測定した。又,横方向閉じ込めパターンを工夫した光平面回路の基礎的な研究として,大きい折れ曲がり角を持って曲がり広い開き角を持ったY分岐,円形ベンドと言った回路の簡単な理論解析及び実験を行い,共に当初の目的どうりの成果が初歩的ではあるが得られたものと考えている。具体的な成果として 1.多層超薄膜スラブ導波路をTi02/SiO2の積層で作成したとき10層程度の積層で充分TEとTMが分離していることを理論及び実験で確認した。 2.この時の伝搬損失はTMモードで1.6db/cm TMモードで3db/cmであった。 3.3次元導波路の理論解析に当って,上下に金属壁を仮定したが,適当なところに仮定するとTEとTMの高次モード各25個程度考慮すれば電磁界の接線成分はベクトル的に接続されることが解った。 4.多層超薄膜スラブ導波路に横方向閉じ込めを加えて3次元光導波路を作成したとき0.3μ厚の時はステップ型閉じ込め構造でも単一動作が可能であるが,0.6μのときにはステップ型では多モード動作となりリブ型にすることにより(外部の層数を適当に取る)単一動作が可能であることを理論的に確認した。 5.また誘電体ストリップ(屈折率<TiO2の屈折率)を多層超薄膜スラブ導波路に装荷することにより3次元光導波路が実現できることを理論的に解析しまたある程度以上の誘電体ストリップの厚さにすると高さ方向のexpdecayにより厚さの効果は飽和することを確認した。 6.又,上記の構造で折れ曲がり導波路を作製したときの最大折れ曲がり角を幾何光学的に解析し,対応した実験により確認した。 7.リブ型3次元光導波路で左右の閉じ込め層数を別々に制御した非対称多層超薄膜3次元光導波路の理論解析を行い,非対称にしたときの特性の面白さを見出した。 8.この構造を平行結合線路に活用することにより結合の強さが制御できることを指摘し,実際にこの考えに基づいて平行結合線路の伝搬定数を計算し強い結合の得られることを確認した。 9.なお,本研究と平行して強い閉じ込め構造を持った光平面回路の3次元光導波路不連続問題の電磁界解析と実験が進行していることも付記させていただく。
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