研究概要 |
ディジタル通信技術は今日ネットワーク技術と結びつき,情報化社会のインフラストラクチャーとして,必要欠くべからざる存在になってきている。特に移動通信需要の増加は従来の有線ネットワークに代わる無線ネットワークの構築を促進させている.ディジタル無線ネットワークの構築は特に工場,オフィースあるいは特定の地域などのローカルエリアネットワーク(LAN)において盛んであり無線LANと呼ばれる。本研究では,現在普及しつつある無線LAN用のディジタル変調方式に対し最近の成果である符号化変調方式の理論を摘用し,従来にはない高性能なディジタル変復調方式を開発することを目的とした. 構内通信などの無線LAN用ディジタル移動通信に対しては多重波伝搬路によるフェージングの影響が最も大きい,共通チャンネル干渉については空チャンネル探索送信制御を前提にするので考えない.変復調方式として,本研究の進展の結果,2値FSK周波数検波系列推定方式あるいは2値GMSK周波数検波系列推定方式のビット誤り率特性が極めて良好なことが判明したため,これらの方式を用いた.GMSK方式は,すでに汎ヨーロッパのディジタル移動通信の変調方式として使用されている実績があり,本研究成果はそれらに直接役立たせることができる.具体的には以下の項目について研究を行った. 〇2値立相連続FSK信号及びGMSK信号のリミッタ・ディスクリミネータ復調,積分放電フィルタリング,系列推定方式を提案し,この方式のビット誤り率を,静的ガウス雑音,レイリー及びライスフェージング通信路に於いて正確な計算機シミュレーションにより確認した.この結果,静的ガウス雑音及びライスフェージング通信路において,従来方式に比べ大きなビット誤り率改善効果を得ることが出来た. 〇上記の復調器としてリミッタ・ディスクリミネータの他に,ディジタル信号処理形式位相同期ループ(DSPDPLL)を用いることを提案した.またDSP DPLLの有限帯域幅特性により生じる符号間干渉を系列推定方式で補償し,大きくビット誤り率が改善されることを計算機シミュレーションにより確認した. 〇得られた研究成果を学会論文誌や国際会議などで公表した.
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