研究概要 |
本研究では,自律分散型機械システム実現のための基礎的検討として,アクチュエータをインテリジェント化しこれを多数組み合わせた群システムの自律分散制御を試みた.まず,DCモータで駆動されるヒンジ状のユニットをサブシステムとし,これを多数連ねたキャタピラ状のものを考案した.サブシステム個々が自律的制御を行うだけで,協調して自転走行することが目標である.次に,正確な数式モデルを導いて3次元シミュレーションシステムを構築した.また,8ユニットからなる実験システムを製作した.制御方式については,まずサブシステム個々が必要なトルクを自律的に生成する,分散型トルク生成則について検討した.できるだけ多くの状態量の関数木として仮のトルク生成則を表現し,遺伝的プログラミングの手法を用いてシミュレーション上でこれを準最適化してみた.その結果,情報としてはサブシステムの接地状態と相対角度,相対角速度だけで十分とわかった.そこで次にトルクパターンの一例を試行錯誤により求め,全状態の軌跡データに基づき線形計画法を用いて上記状態量の関数マップとして初期トルク生成則を構成した.さらに遺伝的アルゴリズムによって改良し分散トルク生成則の準最適解を得た.シミュレーションと実験で検討したところ,設計仕様に対する傾向は理論どおりだが,トルク外乱の影響を受けやすいことがわかった.そこで新たに,サブシステムごとに相対角度に関するロバスト制御を施し,外力に対する応答特性を接地情報に応じて調節してサブシステム間の協調をとる手法を検討した.H_∞制御理論により2自由度ロバスト制御系を組み,外乱オブザ-バを用いて外力応答特性を変化させれば,相対角度目標値を接地状態に応じてステップ状に変えるだけで滑らかな自転走行が実現できた.さらに,サブシステム数を増減した場合や一部が故障した場合にも同じ制御則で走行できることを確認した.
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