研究概要 |
人間が持つ知性や理性に相対する「感性」をモデル化し計算機上に実現できれば、デザインは言うに及ばず、感性計測、絵画・音楽などの感性教育、ヒューマンインターフェース、遊び機械等への応用が考えられる。また感性メカニズムの解明への一助ともなるであろう。 本研究の目的は、感性実現の第一歩として、比較的感性に結びつき易い色を対象に、TVカメラの色情報から、美しい-汚い、暖かい-冷たいなどの感性情報を取り出すシステムを実現することである。従来得られている色知覚の心理学ならびに生理学上の知見を基に,任意結合型のミューラルネットワークを用いて色感性システムを構築し,心理評定実験から得られたデータから抽出される色感性因子によりネットワークの学習及び汎化を行う。さらに,実現されたニュートラルネットワークの内部分析を行い,色感性メカニズムについて色覚系と感性系に分けて従来の心理的・生理的知見と比較考察した。その結果,獲得した内部表現の中の色覚系は人間の色覚モデルと類似した形となり,また感性系は色相とトーン(彩度と明度)の選択的応答の結合した形で表現されることを実証した。 本研究の特色は、思考,判断,分析,理論化などの主に人間の知性系の機能でなく,知覚、本能、衝動などの機能を有する感性系を計算機上に実現するところにある。この感性システムを実現するに当たって,特にニューラルネットワークを用いたのは,まず過去の研究例で色覚モデルとしてニューラルネットが良く適合することが実証されていること,そして、感性は人間の脳内で知覚情報の後に形成されるものであることを考慮すると、非常にシンプルなモデルであるがニューロンは少なくとも脳神経細胞モデルであり感性メカニズムの解明につながると考えたからである。本システムは色のみを対象とした極めてシンプルな構成であるが,感性実現の第一歩として重要な知見が得られた。
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