研究概要 |
本研究課題の目的は,逆問題を応用したロバストサーボ系設計法を開発するとともに,それを「磁気浮上制御問題」に適用し,その有効性と問題点を明かにし,必要に応じて設計法の改良を行うことにある.この目的を達成するために昨年度は,申請者らが提案したロバストILQ設計法をY字型鉄片の磁気吸引浮上制御問題に適用した.その結果,設定値のステップ変動に対して非常に安定な浮上および姿勢制御に成功した.しかしインパルス外乱が存在すると,モデリング時に無視した非線形性もしくは振動モードに起因するモデル化誤差のために不安定現象が起ることが判明した.そこで,本年度はまずこの問題の解決に取り組み,この2種類のモデル化誤差の対策を講じた.まず前者のモデル化誤差に対しては,従来の近似線形化に代えて最近その有用性が指摘されている厳密線形化手法が用いて磁気浮上系のモデリングを行い,その後制御系の設計と制御の実施を行った.その結果,制御性は少し改善されたものの,インパルス外乱に対する不安定現象は解消されなかった.一方,後者のモデル化誤差に対しては,設計時にこれを考慮できるH_∞制御理論を適用して制御系設計を行った.その結果,小さな設定値変動に対してはインパルス外乱による不安定現象を抑制するような補償器が設計できたが,設定値変動が大きくなるとそれは無理であった.なお,厳密線形化の効果を正確に把握するために,剛性の非常に高いバ-ベル型浮上体に対して同様の浮上制御を行い,厳密線形化モデルの方がシミュレーション結果と実験結果が良く合うことを確認した.以上の知見をふまえて,本年度はILQサーボ系設計法の拡張も行った.従来のこの設計法は,ステップ目標入力に限定されていたので補償器の次数も低く,それがコントローラの性能向上に支障となっていた.そのため本年度は目標入力を一般化したILQサーボ系設計法を開発するとともに,そのCADも作成した.
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