研究概要 |
本研究では,有効座屈長の概念を用いない新しい鋼骨組の座屈設計法を示している. 弾性2次解析を用いた設計法では,あらゆる初期不整に等価な初期たわみの決定が最も重要な問題である.本研究では,曲率に着目した新しい等価初期たわみの算定式を求め,これを変断面骨組にシステマチックに適用する方法を提案している.幾つかの例題により,その妥当性を検証した.本研究の成果をまとめると,次のようになる.(1)過去に提案されている等価初期たわみの算定式の物理的な再考察をもとに,新しい算定式を提案した.この算定式は,断面区分による柱の複数耐荷力曲線に対応したものである.(2)等価初期たわみは軸方向圧縮強度に対する初期不整の影響を考慮するために導入される.(3)したがって,初期曲げモーメントの作用状態には影響を受けず,等価初期たわみモードとして1次の座屈モードを用いてよいと考えられる.(4)曲率に着目して,任意の変断面骨組の初期たわみをシステマチックに決定できる方法を提案した.(5)この提案法を2〜3の変断面骨組に対して適用し,その妥当性を示した.静定あるいは最適に設計された不静定骨組の耐荷力を精度良く推定でき,耐荷力に対する安全度もほぼ一定となる.(6)本研究で適用した静定構造物に対して,現行設計法で耐荷力を推定することにあまり問題はない.しかし,耐荷力に対する安全度が一定でない場合がある.(7)部材設計の視点から,現行設計法は有効座屈長が過大となる微小軸圧縮力部材に対して不合理的な設計となる.しかし,弾性2次解析法では設計者の経験的判断を必要とせずに,合理的設計できる.
|