研究概要 |
本研究の目的は,多量に排出されている産業廃棄物を用いた新たな凍上防止対策工法の開発の可能性を探ることにある。そこで,まず凍上を生じる土の基本的な特性を把握するために,これまでに凍上の発生により多くの被害を生じてきた道路切土部において表層から水へ方向に斜面を掘削し,各深さごとに採取した試料に対して試験を行った。その結果,表層付近の試料のpH値は役3(酸性)となっているのに対し,表層から1.0〜2.0mの試料のpH値は6.5(中性)であり,表層部分と斜面内部との物性値の間に大きな隔たりがあることがわかった。次に,産業廃棄物である石炭灰,排煙脱硫スラッジの基本的な凍上性や強度および変形特性を調べるために,異なる温度条件下(主として低温領域)で養生した供試体に対して一軸圧縮試験を行った。その試験結果からは,養生日数の経過に伴う一軸圧縮強さの増加は僅かであり,またその際に生じる体積の変化(凍上量)も小さいことが示された。なお,石炭灰や排煙脱硫スラッジは強アルカリ性を示す。 以上の結果を基に,現場土(酸性土)と石炭灰,排煙脱硫スラッジとを混合した試料について凍上性や強度および変形特性を調べた。なお,比較のために長崎県内の現場で採取した火山灰質粘性土に対しても同様の試験を行った。得られた結果より,現場土に石炭灰や排煙脱硫スラッジを混合すると凍上はある程度抑制されその効果はかなり認められるものの,凍上防止対策工法としての具体的な指針を提示できるまでには至らなかった。この原因としては,上述したように現場より採取した粘土が酸性状態にあるため粘土と石炭灰,排煙脱硫スラッジとの間での化学反応の進行が阻害され,今回用いた配合割合の範囲内ではその効果が十分に発揮できていないためと考えられる。今後は上記の結果を基に配合割合を変えた実験を行い(必要に応じてセメントや石灰などを添加),本工法の実用化に向けてさらに研究を継続していくことを計画している。
|