研究概要 |
利用者の多様化と量的拡大が進行した都市間高速道路において,事故が原因する渋滞発生の頻度は年々上昇傾向にある。高速道路上の交通事故は,道路構造上,出入口が限定されていることから,深刻な影響を及ぼす。この意味で,事故の速やかな発見とそれを受けた適切な処置すなわち交通管制は重要である。 以上のような観点から,本研究では,高速道路における事故の自動検知方法の開発と交通管制上最も必要とされる所要時間の推定に関して,基礎的な検討を行った。まず,事故検知については,事故区間上下流端の交通変量計測値(交通量,速度,オキュパンシ)を入力として用いる方法をいくつか考えた。第1番目のモデルは,ニューラルネットワークを用いたモデルであり,入力層に入力変量数に等しいニューロンを持ち,出力層に事故の有無を判別する1個のニューロンを持つ,単純3層ネットワークのモデルである。第2番目のモデルは,上下流端の交通変量の差をファジィ数として扱うファジィ推論を用いた方法,第3,第4番目のモデルは,1,2のモデルを組み合わせたものである。シミュレーションから得られたデータにより適用性の検討を行った結果,モデル1については,速度とオキュパンシを使った方法が安定した検知を行うこと,モデル2は速度のみを用いればよいこと,ニューロ・ファジィモデルは交通需要が一定水準以上になるとモデル1より有効であること,モデル2はモデル1やニューロ・ファジィモデルに比べ若干劣ること,ファジィ・ニューロモデルは,他のモデルに比し著しく良い事故検知を行うこと等がわかった。 所要時間の推定については,衝撃波理論を用いた方法を開発したが,モデルにおける様々な仮定が実際の交通流を説明することを妨げているためか,結果的には20〜30%という大きな誤差を生むものとなった。
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