研究概要 |
本研究は、限外濾過膜によるウイルスの排除特性を明らかにすることを目的として、以下に示す成果を得た。 1.公称分画分子量2万の平膜或いは管状膜で、材質ポリスルフォン(PS),スルフォン化ポリスルフォン(SPS),ポリオレフィン(PO),ポリアクリロニトリル(PAN)のものについて、ポリエチレングリコール(PEG)標準粒子を用いて細孔径分布を求めたところ、対数正規分布で主細孔分布が表せることが分かった。また、同じ公称分画分子量の膜でも、その中心細孔径や分散が大きく異なり,PEGの阻止率も異なることが明らかとなった。2.上記の膜を用い、大腸菌ファージQβ(25nmの大きさのほぼ球形の粒子)の濾過実験を行った結果、全ての実験(全実験数30)において程度の差はあれファージは一部通過し、そのバルク基準のみかけの通過率は10^<-3>〜10^<-7>であった。3.流速変化法を用いてQβの物質移動係数を求めた結果、各膜において真の通過率は上記結果のみかけの通過率より1〜2桁高くなることが分かった。4.膜細孔を推定された対数正規分布で表し、濃度分極現象も組み入れてモデル計算を行ったところ、主分布の膜細孔だけではQβの通過は実験結果に比べて極めて小さい値しか与えず、実際の現象を説明し得ないことが分かった。また、Qβの阻止率とPEGの阻止率に相関がないことから、膜には主分布から外れた異常に大きい細孔が存在することが示された。PANの場合、異常細孔数は10^6個/m^2と推定された。さらに、その存在を組み入れたモデルを提示した。5.別に分画分子量4万、20万の膜を用いた場合でも同様な結果を得た。また、活性汚泥混合液や河川水・湖沼水などにQβを添加して濾過実験を行ったところ、膜の排除性能は上がり、それは浮遊固形物質(SS)が形成するケーク層や、溶存有機物質が形成する膜面ゲル層などに吸着等により抑留されるためと考えられた。活性汚泥の濾過において、吸着されたQβを脱着させ定量化したところ供給量の1割程度抑留されていることが推定された。
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