研究概要 |
小規模汚水処理施設である浄化槽も公共用水域の微生物的安全性にたす役割は大きいが、ウイルス除去に関する研究はない。そこで浄化槽モデルを用いて、浄化槽のウイルス除去能力とウイルス除去からみた最適の運転条件を求めた。ウイルスは嫌気第1槽でよく除去されるが、嫌気第2槽での除去率は低かった。除去率のもっとも高い部位は接触曝気槽であり、放流水ウイルス濃度を決定付ける。大腸菌ファージは標準負荷(0.076KgBOD/m^3・日)では嫌気第1槽流出口で76%、嫌気第2槽流出口で82%(前槽との比較で25%)、接触曝気槽流出口で97%(81%)の除去率が得られた。負荷を1.5倍以上にすると除去率は低下し、とくに2倍になるとウイルス除去率は極度に低下し、曝気槽流出口で64%となった。poliovirus1およびcoxsackie-virusについても、標準負荷との関係は同様であったが、除去率は大腸菌ファージの場合より少し高かった。大腸菌ファージ、poliovirus1、coxsackievirus B3は、浄化槽の浄化過程に沿ってそれぞれ同様な消長を示し、poliovirus1およびcoxsackievirus B3のようなエンテロウイルスの挙動を知るのに、大腸菌ファージはよい指標とすることができることを確認した。完全混合槽としての解析から不活化速度定数(dN/dt=-ktのk値)を求めた。k値を比較することによって,ウイルスの除去率の違いは単に滞留時間が変化しただけでなく、負荷が変化したことが原因していることが明らかになった。すなわち、標準負荷以下の場合と比較して負荷が大きい場合はk値は小さくなる。除去の程度は流入濃度が相当に変化しても影響は受けなかった。負荷が適切なら、98%の除去率が得られるが、処理水にはウイルスが残存するので、公共用水域の安全のためには消毒操作が必要である。
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