研究概要 |
積雪地域に建設される大規模構造物において,その屋根上積雪荷重を制御する場合に考慮する必要がある重要な知見として,以下のことが明らかにされた。 1)積雪荷重を推定するには,現行の建築学会基準である「1・2月の平均風速」ではなく,「日降雪深が10cm以上の日における平均風速を用いることによって高精度の推定が可能となる。このことは,多量の降雪が発生する数日間における風速を分析した結果,10cm以上の降雪があった日の後に積雪荷重が増大する割合が高いことが要因である。 2)屋根上積雪の堆積形状を推定する手法として,風洞実験によって屋根面上の風の流れ場を判定して,その結果から屋根雪の堆積形状を推定する手法を検証した。この方法と従来から用いられている粉体風洞とを併用することにより,より精度の高い推定が可能になることを明らかにした。 3)大規模構造物における荷重制御を規則的な滑落雪によって行うことを考え,その場合に,屋根雪の滑落抵抗力となる屋根葺材と屋根雪との間に作用する凍着抵抗力を低減するための材料選定手法を明らかにした。その材料選定に際しては,材表面料の凹凸性上を示す粗さと撥水性状を示す液適との接触角を指標とすることが有効である。このことは,屋根雪が屋根葺材に凍着するときの屋根葺材表面と雪との接触状態,すなわちその実質的な接触面積に支配されることが主要因となる。 4)実際の建築物における屋根雪の滑落現象で問題となる屋根雪の部分的な滑落現象を実験的に検証した。屋根面部位の違いによって作用する抵抗力が異なることを明らかにし,その状態に対応した滑落実験の結果を基にして,部分的な滑落現象を説明する理論を確立した。
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