研究概要 |
音楽を音源として用い、室内音響の時間的物理ファクターの一つである初期反射音の遅れ時間(△t_1)を変化させ、左右頭皮上(T_3とT_4)で観測される連続脳波の記録を3名の被験者(A,B,C)について行いα波帯域の自己相関関数(ACF)を解析し、主観的プリファレンスとの関連性を追求した。 その結果、AとBの被験者から得られた左右頭皮上脳波のACFの有効継続時間(τ_e)は、エコーを感じる△t_1=245msの場合に比べ、プリファレンスが最大となる△t_1=35msの方が有意に長くなることを見いだした。左半球上で観測され解析されたτ_eの平均値は3名とも△t_1=35msにおいて300±47ms以内であったが、右半球上で観測されたτ_eは310±70msとなりデータの安定性は見らず、△t_1=245msとの比較では一定の傾向は見られなかった。なお、Aの被験者は有意差こそないが、△t_1=35msで長くなる傾向であった。また全被験者において、右半球上では全く有意の差はなかった。特記すべきことは、すべての被験者において、5-40Hzの帯域で解析されたACFのZero Cross数は左半球上で有意に高い傾向があった。このことからも、左半球の優位性が伺える。ただし、狭いα帯域のZero Cross数は、それ自体意味をなすものではない。 さらに、10名の被験者を用い残響時間(T_<sub>)変化させ、主観的プリファレンス実験に加え、上記と同様な脳波の解析をおこなった。その結果、プリファレンスと脳波のα波帯域のτ_eの平均値は有意な正の相関があること、また左大脳半球の優位性を認めた。
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