従来の室内壁面熱伝達率の測定は、局所または壁面平均熱伝達率に限定され、室内各面取合い部分の熱伝達率を測定することは困難であった。本研究の目的は、赤外放射温度計を用いた壁面の熱伝達率分布の測定方法の開発と、その方法を用いて、壁面の取合い部分(隅角部)の熱伝達率の分布を求めることにある。この測定方法の特色は、赤外放射温度計により模型壁面温度を測定し、その模型壁面の表裏面温度差と熱コンダクタンスより伝達熱流密度を求めるところにある。この測定方法の精度を上げる要因として、模型壁面の裏面温度を均一にすることが上げられる。そのため、模型壁面は恒温壁面(恒温水槽:1mxlmx0.075m)に厚さ20mmのネオプレンを貼付したもので、その恒温壁面は熱伝導率の大きいAl板(厚さ10mm)製とし、かつ水槽内を十分攪拌した。 実験はまず単壁面について行い、つぎに壁の取合い部分について行なった。壁の取合いは、二つの模型壁面によって構成され、今回は二つの壁面温度が同一の場合について実験を行なった。取合い部分の熱伝達率は、壁面中央部の値とは異なり、上方に行くほど小さくなる傾向を示す。この測定方法は、赤外放射温度計で壁面温度を測定する際、壁面反射による人体からの放射熱の影響を受けるが、表面温度測定について更に改良をすれば、取合い部分の熱伝達率を正確に測定出来き、今後の研究成果が期待できる。
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