本研究は、都市近郊に存在する農業用ため池を居住環境資源として位置づけ、その整備・保全・管理の方向性を探るために、ため池の公園的整備が進められている愛知県東海市と農業用ため池として半自然的環境を形成している三重県津市を対象地域として、ため池が持つ居住環境資源としての可能性、住民の利用実態と評価を通してため池の利用効果・存在効果およびため池整備に対するニーズを調査分析したものである。 東海市に55箇所、津市に81箇所のため池がある。市街化区域にはそれぞれ18箇所、10箇所であるが、都市公園のスキマに位置しており、都市空間における公園機能を補完する地理的条件を有している。また、市街化調整区域のため池は、周辺の農地や林地と共に都市空間を取り巻く半自然的環境を構成する要素となっている。 ため池の整備形態の違いによる効果と問題点を明らかにするために、公園的整備の有無と周辺100mの範囲の土地利用構成からため池の類型化を行い、典型的なため池を10箇所選定し、周辺居住者にアンケート調査を行った。結果を要約すると、公園的整備されたため池は多くの住民に利用されているが、農地や林地に囲まれた未整備状態のため池はほとんど利用されない。周辺に宅地が多くなるほど利用するものが増える。利用されない第一の理由は利用できるように整備されていないことであるが、危険・汚い・アクセスしにくいことも周辺住民の足を遠ざける要因となっている。しかし、ため池の存在自体が否定されているのではなく、むしろため池を積極的に評価している住民が多い。それはため池が利用効果だけでなく、開放性・日照などのオープンスペース機能、生態系保全機能などを持っているためである。その場合、利用効果と同時に存在効果を高めるような整備のニーズが認められる。
|