従来のクロムの純度を越えるために、クロムの精製の手順のなかでも、本年度は従来より高性能の精製装置の作製とそれによる精製効果を調べることに重点を置いた。 その一つは、申請者らが特別に製作した超高真空対応のヘリウム・アルゴンアーク溶解炉の精製効果試験であり、先ず純鉄について装置の性能を確かめた後、市販の高純度クロムをアルゴンアーク溶解して棒状試料を作製した。 もう一つは、申請者らが特別に設計した超高真空対応の高周波加熱浮遊帯溶融精製装置であり、予定より少し遅れて一応完成した。しかし恐らく世界で初めての型の装置であり、種々の修正・改良が必要になり、また水素中(本科研費で購入した水素高純度精製装置使用)で加熱溶融するためその安全対策にも万全を期す必要があったこともあり、試運転が大幅に遅れた。先ず純鉄について装置の性能を確かめた後、上述のアーク溶解して作製した棒状クロムの浮遊帯溶融精製を試みた。 現時点ではまだ分析結果が出ていないが、これらの装置の製作とその精製効果については今年5月末の第1回超高純度ベースメタルに関する国際会議(UHPM-94)で発表する。 今後は、計画通り、陰イオン交換精製を加えた一連の精製実験を行い、成功すれば、得られた高純度Crに、液体ヘリウム中通電加熱急冷や電子線照射などにより点欠陥を導入し、自己格子間原子や空孔の形成エネルギーおよび移動エネルギーなどその基本的性質を調べる予定である。
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