研究概要 |
AlNセラミックスの焼結は液相焼結機構で進むことが知られているが,この液相は焼結助剤と原料中の不純物酸素から生成すると考えられていた.本研究では粒界相成分が高温ではAlN自身と反応することを実験的に示し,焼結時の熱伝導率向上の機構の一端を明らかにした. 高温反応を明らかにするため非酸化雰囲気で使用可能な超高温DTA(最高温度2000℃)を試作した.試作したDTAはW/W-Re系熱電対を組み込んだBN製のDTAユニットを用いており,ヒ-タからのリ-ク電流やC蒸気が試料に影響しないような構造を工夫した.また,直流電源を用いてノイズとなりうる急峻な制御電流の変化を極力抑えた.一方,高温での状態を凍結するために試料を高温から急冷する実験も行った. Y_4Al_2O_9-AlN系,Y_3Al_5O_<12>-AlN系およびAl_2O_3-Y_2O_3共晶組成とAlNの間の各組成について液相生成温度を測定した.測定後の構成相分析から実験範囲内で化合物の生成は認められず,いずれの系でもAlNを添加するとAl_2O_3-Y_2O_3系のそれぞれの化合物に対して液相生成温度が大幅(80〜230℃)に低下した.実験範囲で最低液相生成温度は約1690℃であった. 上記組成を高温から急冷した試料のXRD,EPMA測定の結果から,粒界相成分の格子定数が液相生成温度以上で若干変化する現象が見られたが,液相中に窒素が溶解しているという直接的な証拠は得られなかった.これはDTAの結果と合わせてAlNと粒界相がそれぞれ共晶系の振る舞いをすると考えると理解できる.Y_3Al_5O_<12>-AlN系の一部について予想状態図を提案した. AlNの焼結は添加助剤と原料中の不純物酸素から生成する液相により進行するが,その際にAlNが粒界相中に大量に溶解し再析出する過程で不純物酸素が粒界相中に取り残され高純度化する.
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