研究概要 |
強度-延性バランスを発現する代表的強化機構である変態誘起塑性現象を中心にしたTRIP鋼、マルテンサイト系鋼、高張力熱処理鋼、オーステナイト系鋼の低温、水素環境中における環境強度を、微小試験片法によるレーザー溶接金属部の低温強度を含め、水素環境脆化感受性が高い金属間化合物と比較して、評価できた。 1.TRIP薄鋼板の現寸法の制約を解決できる厚さ0.5mm×10mm角微小試験片を用いた小型パンチ(SP)により、延性脆性遷移曲線、延性脆性遷移温度(DBTT)、低温環境強度、破壊形態、ワイブル分布特性を評価した。0.37%C-1.13%Si-1.35%Mn鋼(残留オーステナイトγ_R=15%,YP=692MPa,TS=970MPa,EI=31%)、0.11%C-1.18%Si-1.55%Mn鋼(γ_R=6%,YP=412MPa,TS=615MPa,EI=37%)の2種類のTRIP鋼板のSP-DBTTは、高γ_R鋼で高く、ワイブル分布の形状パラメータmと分散σの温度依存性は両者で異なり、低温域における残留オーステナイトの延性への寄与の違いが認められた。 2.鉄鋼のレーザー溶接部のミクロ組織と対応させた低温衝撃特性(DBTT,FATT)を、0.7,1.0,1.5mm角超小型の衝撃試験片を用いて評価し、JIS標準寸法試験片との相関を確認して、今後の高強度薄鋼板の低温衝撃特性評価法を確立した。 3.高張力熱処理鋼(PC鋼棒)の耐水素脆化に及ぼす合金元素および熱処理の影響を調べて、焼入れ焼戻し熱処理組織とSi,Ni添加により水素脆化が改善できた。Type316オーステナイト系鋼の耐水素脆化に及ぼす鋭敏化処理およびTi添加効果を、低歪み速度試験法により調べた。 4.トリチウム電顕オートラジオグラフ法により、ミクロ組織と対応させた水素分布観察を行った。
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