研究概要 |
ニッケル-金属水素化物電池の基礎研究として先ず,I)その充放電機構を明らかにするために,PdおよびPd合金を負極に用い充放電時の電極電位-時間曲線について,その理論式と実測値との比較・検討を行った。次いでII)Co-Mo系合金を負極に用いたアルカリ蓄電池の充放電特性を調べた。 以下にその成果の要約を記す。 1.充放電中,正極Ni(OH)_2/NiOOHの電位変化は小さいので,充放電特性は水素化物電極の表面上での電荷移動過程と電極内の水素拡散過程とが律速しているとして水素化物電極の電位-時間曲線をモデル解析した結果,実測曲線と比較的よく一致することを見出した。 2.一連のPd固溶合金の放電容量(C)に及ぼす合金組成の影響を検討した結果,Pd-7.5at.%Rh合金のC値が最も大きく,約215mAg^<-1>(Pd_<92.5>Rh_<7.5>H_<0.85>)であった。これはPd-Rh合金の価電子濃度と対応しており,さらに高Rh組成の合金はRh-rich相の析出のためにC値は減少した。 3.Pd黒/Pt黒をそれぞれ約1mgcm^<-2>重量メッキしたPd-7.5at.%Rh,Pd_<97.5-x>Ni_<2.5>Rh_x(x=7.5)合金は充放電時の活性化過電圧が減少し,急速充放電特性が優れていることを見出した。 4.組成Co_3Moを中心とする合金粉末を負極に用いた電池の放電容量は大きく,初期1〜2サイクルにおいてCが450mAhg^<-1>(充電量)以上を示すことを見出した。充放電後にCo(OH)_2及び金属Coの生成が観察され,本電池はニッケル-水素化物電池ではなく,Coの溶出-析出反応が関与している一種のアルカリ蓄電池であることがわかった。全電池反応はCo+2NiOOH+2H_2O【double half arrows】Co(OH)_2+2Ni(OH)_2,E_<cell>=1.22Vで表される。なお初期1〜2サイクル時に高いC値を示す放電反応は,充電時に吸着した水素の電気化学的脱着反応も同時に生じている。
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