研究概要 |
本研究では、液体急冷法により得られた均一な組織を有するアモルファス薄帯を酸化する簡便な方法によりセラミックス薄帯を作製し、その特性を調べることを目的としている。また、酸化条件による組織の変化を調べて、組織制御技術を確立し、それに伴う特性の変化を調べる。 本年度は液体急冷法により作製したAl-Ln(Ln:希土類元素)系アモルファス合金を大気中で酸化し、その酸化挙動と組織の変化について調べた。はじめに、アモルファスAl_<50>Y_<50>を大気中で加熱した場合、昇温にともない結晶化し、その後Y_2O_3,Al_2O_3およびその複合酸化物を形成し、最終的にY_2O_3,Y_3Al_<50>O_<12>(イットリウムアルミガーネット,YAG)およびα-Al_2O_3からなるセラミックス薄帯が得られ、その厚みは20μmであった。また、この薄帯は空隙のない緻密な組織を示し、構成元素の酸素との親和力の差を反映して、表面から内部に向かってY濃度が高く、Al濃度は逆に減少し組成傾斜を示した。また、結晶粒の大きさも表面近傍では100nmの微細な組識からなるが内部になるに伴い粒成長し、中心部では1μmに達しており、内部と表面近傍での酸素濃度の差に起因しているものと考えられる。このような特異な組織を有しているため合金の酸化によっても酸化前の形状を保っている。その外、Al-La,Al-Gd,Al-Nd系アモルファス合金を用いた場合にも同様の結果が得られた。さらに、これらのセラミックス薄帯は透光性を示した。また、Al-Y系に遷移金属を添加した場合にも透光性のセラミックス薄帯が得られると共に遷移金属により種々の色調を示し、Feでは黄色、Crでは肌色、Mnでは黒色が得られることが分かった。 今後は同様な手法により磁的特性が期待できる系において透光性のセラミックス薄帯の作製を行い、光磁気材料としての可能性を調べる。
|