連続鋳造パウダー相は連鋳鋳型内では融体・ガラス状態・結晶の形態で存在することが知られており、これらの形態間の変態の潜熱による伝熱挙動の変化、ガラス中に析出した結晶相が熱放射伝熱の障壁となることなどが指摘されている。本研究では連続鋳造パウダー中の伝熱挙動を明かにするため以下のような研究を実施した。 1.連鋳パウダー融体について(1)融体の熱伝導率を新たに開発したレーザーフラッシュ示差3層試料法により測定した。(2)この測定における誤差について有限要素法による解析を行ない、本研究で採用した実験条件では十分な精度で測定が行なわれていることを示した。(3)融体を急冷したガラス試料の吸収係数を赤外および可視領域で測定し、得られた光学的データを用いて数値計算によりレーザーフラッシュ法で得られた見かけの熱伝導率から熱放射による寄与を分離し融体の熱伝導率を求めた。この3つの研究のうち、(1)の光学的データについては既に発表を行なった。また(2)の検討結果、(3)の結果得られた知見についても現在投稿中である。 2.固相の連鋳パウダーについては現在試料を作成中であり、DSCによる熱容量的特性の解明の他、今後、以下のような研究を行なう。(1)連鋳パウダーを急冷ガラス化した試料を種々の条件で時効し異なった結晶化率をもつ試料を作製しこれらの試料の熱伝導率を計測する。(3)X線計測により結晶化率を計測し、更に光透過率の測定から結晶による光の散乱を定量化する。(4)結晶化率、結晶による散乱強度、熱伝導率の関係を明かにし、熱放射の影響を散乱を含む伝熱モデルによりこれらの関係を定量化する。 以上の結果を基礎として連鋳機中のパウダー相の伝熱挙動を詳細に明かにする予定である。
|