研究概要 |
ITO(In_2O_3-SnO_2)粉末の酸素放出,吸収現象を追究し,10^<-4>atmにおける酸素分圧-酸素濃度-温度曲線,{P(O_2)-C(O)-T}曲線を作成した。曲線は昇降温に依存して変化した。粉末X線回折手法による析出物の同定はできなかったことから,数原子単位で似たような結晶構造が混じりあったドメイン構造をとっており,その界面エネルギーが変化することにより,酸素の放出,吸収が異なってくる,と結論した。湿った空気中にいITOを放出して水素あるいは水蒸気の導入を試み,その後に酸素の吸収を測定した。結果は放置前のITOと同じ結果となり,純粋なITOへの水素,水蒸気の溶解は小さいと結論した。しかし,実際のITO製品には含まれる不純物に起因した酸素欠陥の存在下で溶解する水素,水蒸気の量は無視できないはずである。水素,水蒸気の溶解機構を知るため,ITOと同じC-希土類似構造を有する化合物の中で,A_nO_<2n-2>構造をとるSc_2O_3-HfO_2系の化合物,およびパイロクロア型化合物のLa_2Zr_2O_7の2種類について水素,水蒸気の溶解量を調べた。両化合物ともに水素,水蒸気の溶解は無視できるほど小さかったが,In_2O_3が微量に含まれると,La_2Zr_2O_7への明瞭な水蒸気の溶解が認められた。La,Zrの電荷は3^+,4^+とITOの場合と同じであり,不純物を含んだITOへの水蒸気の溶解は今後も研究を続ける必要のあることがわかった。またこの研究を通じて溶解H_2Oの検出技術を確立できた。ITOの酸素の吸収,放出と電気伝導率の変化の測定も試みた。両者は比較的対応している反面,対応していない部分も認められた。この後者については水蒸気の影響,あるいは他のガス成分の吸着による表面伝導の変化によるとみられ,今後の研究の重要なターゲットになることを確認できた。
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