研究概要 |
まず,電解浴の物性値を測定するための機器の選定を行った。使用する機器はその精度,価格等を考慮して,電導度,密度,粘度の測定に対して,それぞれ2極式交流電導度計,浮力式比重瓶,キャノンフェンスケ型粘度計を採用することとした。これらの機器を用いて,合成した亜鉛電解採取浴および鉄鋼会社で鋼板の表面処理法として用いられている亜鉛電気めっき浴の物性値を比較した。その結果,電導度の値に顕著な差が認められた。また,密度,粘度に関しては亜鉛電解採取浴に比べ電気めっき浴の方が大きい値を示した。以上の結果から,亜鉛の電解採取浴はめっき浴に比べ浴抵抗による電圧降下を抑えたエネルギー効率重視型の浴組成になっていることがわかる。亜鉛めっき浴は,浴中の亜鉛イオンの濃度を大きくし,かつ強撹拌を行うことにより亜鉛析出の限界電流密度を増加させ,さらに高電流密度で電解を行い,高生産性を狙ったものになっている。ところで,合成した亜鉛電解採取浴の物性値を実際に非鉄製錬各社で使用されている現場の電解液の物性値と比較したところ,いずれの物性値にも相違がみられた。この原因としては,現場の電解液には亜鉛イオンの他に種々の金属イオンあるいは有機物が存在していることによるものと思われた。 次に,銀の電解精製浴(硝酸塩浴)および電気めっき浴(シアン化物浴)の物性値を比較した。その結果,銀電解精製浴の特徴としては亜鉛の場合ほど電導度が高くなく,電槽電圧の観点からはさほど有利な組成とは言えないことがわかった。これは,銀自体が比較的高価な金属であることおよび電導度改善のために硝酸濃度を高くすると電析した銀の再溶解のおそれがあることによるためであると思われた。一方,銀の電気めっき浴は,シアン化物を採用することにより高過電圧を実現し,良好な電析物を得る浴設計となっている。
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