研究概要 |
柱状晶組織の123相(YBa_2Cu_3O_<7-x>)は融液+211相(Y_2BaCuO_5)の状態からの一方向凝固により得られるが、この組織のY-Ba-Cu-O超伝導酸化物(YBCO)と銀との低抵抗接合体を開発するため、2種類の製造法について研究した。接合体の界面抵抗は四端子法により77Kで測定した。第1の方法は、ホットプレスにより固体銀/YBCO接合体を造る固相法であり、界面に反応層は検出されなかった。その界面抵抗率ρcは接合温度および接合圧力の増大に伴い減少し、接合条件873K,32MPa,3600sで約2×10^<-12>Ω・m^2の最低値が得られた。もう一つの方法は、溶融銀を用いて銀/YBCO接合体を造る液相法であり、この場合の界面には著しい反応層が生成した。界面反応の原因は、銀によるYBCOの融点低下に基づく123相の融液+211相への分解にあるので、この反応層は徐冷凝固させることにより123相に回復した。この場合回復により界面抵抗率ρcが著しく低下し、その最低値は77Kで約10^<-12>Ω・m^2程度と複合線材の安定条件に相当する値を得た。さらに、接合試料に用いたYBCO基盤の組織制御を研究するため、123相柱状晶の成長機構の解析を行った。ファッセト面をもつ123相の成長が、融液+211相の状態から融液中の拡散と211粒子の溶解による包晶反応により起こることから、123相の凝固速度Rと過冷度ΔTpcの関係が次式で与えられた:R=(Ca/η)・[(ΔCt+ΔCrc)/{Tp/m_<L123>+Cf・(Tp/m_<L211>)}]^2、(Ca,Cfは定数,ηは融液の粘度,ML=1/m_<L123>-1/m_<L211>,m_<L123>とm_<L211>はそれぞれ123相と211相の液相線勾配,ΔCrcは界面での211粒子の表面エネルギーによる融液濃度差)。この結果は実測のR-ΔTpc関係と良く一致した。次いで、この関係および等軸晶生成の過冷度の実測値との関係から123相の柱状晶-等軸晶遷移条件が導かれ、実験結果と良い一致を得た。
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