本研究においては、セルロース、でんぷん等の天然多糖類や、ゼラチンなどの天然高分子による包接化合物生成反応の平衡定数の圧力依存性を明確にすることを目的として、これらの高分子溶液の超高圧下でのゾル-ゲル転移やコイル-グロービュイル転移等の相転移現象の測定ならびに相平衡下での低分子量化合物の分配係数の測定を精密に行うための測定法の開発を行った。はじめに、超高圧下での相平衡を直接観察できる装置を作製し、ゼラチン水溶液のゾル-ゲル転移温度の圧力依存性を最高圧力500MPaまでの領域において測定した。さらに、低分子量化合物として、塩化ナトリウムや塩化リチウムなどの電解質を用い、これらを添加した場合のゾル-ゲル転移温度の測定を行った。その結果、電解質濃度が希薄な場合には転移温度は増加するが、濃度が濃くなるにつれて転移温度が減少する傾向が見られた。また、この傾向はゼラチン濃度が濃いほど顕著であることがわかった。このように転移温度が圧力や濃度によって複雑に変化することを報告したのは本研究が最初である。次に、高圧下で相分離した場合の各相における低分子量化合物の分配係数を測定し、それより包接平衡定数を決定するための2個の高圧セルより構成される高圧分光測定装置を製作した。測定は紫外・可視分光装置を使用した。現在、装置の健全性のチェックを行っている。健全性が確認された後、超高圧下での包接平衡の測定を実施する予定である。
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