研究概要 |
本研究の最終目標は、ラテックス粒子の粒径分布を非常に細かい数10nmの均一粒子径にシャープに揃えることである。その第1段階の目的は、軸流を伴うテイラー渦流の局所的には剪断力の強くない混合状態で全体的には滞留時間をシャープに制御できる押し出し流れに近い波動及び準周期性波動渦流状態を作り,スチレンの連続乳化重合を行うことである。 【渦間混合モデルとスチレンの乳化重合の基礎実験】 [実験1.]この流動系に適応する渦対間物質移動係数k_<CB>を定義した新しい混合モデルを構築し,目的の乳化重合の反応制御の基本となる渦流の混合特性をトレーサ応答法により調べた。 [実験2.]別の槽で作ったエマルションと開始剤をある一定の滞留時間で別々に共軸二重円筒装置に供給して,内円筒の回転数ωに比例するテイラー数Taである渦流状態にセットしてスチレンの連続乳化重合を行った。 [結果1.]波動テイラー渦流と準周期性波動テイラー渦流の流動状態がこの乳化重合に適していること,流体の動粘度νが渦対間物質移動係数k_<CB>に大きな影響を与えること,その結果,その流動範囲内において無次元パラメータk_<CB>d/νがテイラー数Taとよい相関があり,Taの約1.6乗に比例することがわかった。また,渦内混合を逆混合係数として求めた結果,逆混合係数は渦対間物質移動係数に比例することがわかった。 [結果2.]ドデシル硫酸ナトリウムを乳化剤として,過硫酸ナトリウムとチオ硫酸ナトリウムを開始剤として用いて,スチレンの乳化重合を本流動系で行った結果,テイラー数Ta=1,000前後の波動及び準周期性波動テイラー渦流領域で滞留時間40分での操作が重合反応速度およびラテックス粒子の粒径分布の観点から最適であることがわかった。
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