研究概要 |
ジベンジルエーテル(DBE)を用いた液膜型電極が高アンモニウムイオン選択性を示すことを見いだした。DBE中の酸素原子はアンモニウムイオンの水素原子と水素結合を形成すると考えられるので、先ず、DBEのベンゼン環に電子供与性又は吸引性の官能基を導入したDBEの類似化合物(モノエーテル化合物)を合成した。DBEのベンジル基のパラ位にこれらの官能基を導入すると、アンモニウムイオン選択性に影響を及ぼすことが明らかになった。この場合、アンモニウムイオンとイオノフォアの錯体形成においては、エーテル酸素の位置、骨格の柔軟性やベンジル基の芳香族π電子が重要な役割をすることがわかった。 次に、モノエーテル化合物についての結果に基づきジエーテルやテトラエーテル化合物を設計・合成した。そして、それらのイオノフォア分子のアンモニウムイオン選択性と分子構造を詳細に検討した。ベンジル基の間にアルキレン基を導入したジエーテル化合物はDBEよりさらに高アンモニウムイオン選択性を示した。この場合、アルキン基としてブチレン基を導入したものが最良であった。また、エーテル酸素の隣の炭素にジメチル基を導入することもアンモニウムイオン選択性の向上に有効であった。それはジメチル基の立体効果で、アンモニウムイオン以外のイオンに対する安定度が低くなるためである。一方、テトラエーテル化合物では、アンモニウムイオンよりもイオン径の大きいカチオンに対する選択性の方が大きかった。これらの結果より、最終的にはジエーテル化合物であるdibenzyl-1,1,4,4-tetramethylbutyletherが最良のアンモニウムイオン選択性を示し、この化合物に基づくイオン選択性電極のNH4^+/K^+選択性は50で、現在までに報告されたアンモニウムイオノホアの中で最高の特性を示した。
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