研究概要 |
我々は既に[Cp^*_2Ru_2Cl_4](Cp^*=η^5-C_5Me_5)と各種チオラート化合物との反応により、架橋チオラート配位子を有する一連のルテニウム二核錯体が得られることを見い出しており、今年度はこれら錯体の反応性を詳細に検討した。その結果、Ru(II)を含む錯体[Cp^*Ru(μ-SPr^i)_2RuCp^*]は、(1)各種末端アルキン類と容易に反応し、二核サイト上にアルキンが1〜3分子とりこまれた特異な構造を有する錯体を与え、その生成物の構造が著しくアルキンの置換基の種類に依存すること、(2)アルキルハライドと反応して、まだ報告例の少ないdinuclear oxidative additionによる生成物を与えることなどを見い出した。一方、Ru(II)/Ru(III)を含む錯体[Cp^*Ru(μ-SPr^i)_3RuCp^*]については、(1)プロパルギルアルコール類の二核上での特異な2分子カップリングによるジルテナシクロペンタノンまたはペンテノン錯体が生成すること、(2)一連のRu(III)錯体[Cp^*RuX(μ-SPr^i)_2RuCp^*Y](X,Y=Br,SPr^i,H,alkyl)が誘導でき、X=H,Y=CH_2Phについてはあまり報告例のないdinuclear reductive eliminationが容易に進行することなどが判明した。また、Ru(III)錯体[Cp^*RuCl(μ-SPr^i)_2RuCp^*Cl]については、(1)これをカチオン錯体[Cp^*Ru(μ-Cl)(μ-SPr^i)_2RuCp^*]^+に変換した後末端アルキン類と反応させると、ルテニウム2原子炭素3原子からな〓5員環基本骨格をもつ興味深い二核錯体が、またプロパルギルアルコール類との反応ではアレニリデン錯体が得られること、(2)ジスルフイド錯体[Cp^*Ru(μ-SPr^i)_2(μ-S_2)RuCp^*]に変換した後、Pt(PPh_3)_4やPd(PPh_3)_4と反応させると、PtRu_2またはPd_2Ru_2骨格をもつ混合金属スルフィド-チオラートクラスターが誘導できることなどが判明した。また、イオウのかわりにイオウの同族であるセレンやテルルを含む新しいセレノラート、テルロラート架橋ルテニウム二核錯体の合成にも成功している。
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