研究概要 |
交付申請書に記載の計画に従い研究を行い次の成果を得た。 1.ジブロモメチル-t-ブチルジメチルシランにLDAを作用させて得られる炭素陰イオン1にベンズアルデヒドを作用させるとベンズアルデヒドが2分子とりこまれた生成物が得られることを見いだした。反応は次のように進行するものと考えられる。炭素陰イオン1がカルボニル化合物に付加しアルコキシ陰イオンを生成する。次にこのアルコキシ陰イオンにおいてシリル基が1,3転位し炭素陰イオンが再生し最後に2分子目のアルデヒドが反応するというものである。ジクロロメチル-t-ブチルジメチルシランとLDAから調製した炭素陰イオンにひとつめのアルデヒドを作用させ次にHMPAを加えケイ素の1,3転位を起こさせ最後にふたつめの求電子剤を加えれば2種の求電子剤をone-potで順次反応させることができることを見いだした。得られたジクロリドは容易に対応するメチレン体に変換できる。従ってt-ブチルジメチルシリルジクロロメチルリチウムがメチレンジアニオン等価体として利用できる。 2.t-ブチルジメチルシリルジハロメチルリチウムとカルボニル化合物の付加体のアルコキシド陰イオンにおいてシリル基が1,3転位し1,1-ジハロ-2-t-ブチルジメチルシロキシアルカン2が生成する。この2をエーテル中、-78℃でLDAで処理し室温まで昇温すると(Z)-1-ハロ-2-t-ブチルジメチルシロキシ-1-アルケンが99:1以上の高立体選択性をもって生成することを見いだした。アルケン部分をもつケトンから導いたシリルエーテルに対してLDAを作用させるとカルベンが分子内アルケンによってトラップされたシクロプロパン体の生成が認められる。従ってこの転位反応はリチウムカルべノイドから直接起こるのではなく,カルベノイドからLiBrの脱離によって生成するカルベンを経由して進行するものと考えられる。
|