研究概要 |
本研究では、α,β-不飽和アルデヒド=ジメチルヒドラゾンのα位が選択的にアルキル化され、さらに炭素-炭素二重結合がα,β-位からβ,γ-位に転位するという反応を不斉第4級炭素原子の構築に適用するため、まずジメチルヒドラゾンとイミンを合成し、その反応性について検討した。その結果種々のヒドラゾンやアルキルイミンでは化学収率や操作の点においてジメチルヒドラゾンよりも用いやすい優れたヒドラゾンであることがわかった。この結果を基に不斉源をもつアルキル基を導入し、不斉合成が行えることを見いだした。また、不斉ヒドラジンであるSAMPやRAMP((S)および(R)-1-amino-2-methoxymethylpyrrolidine)ヒドラジンを用いてヒドラゾンとし、同様のα位のアルキル化を行ったところ、立体選択的にα位がアルキル化され、不斉第4級炭素原子を構築することができた。この段階でジアステレオマ-である生成物の高速液体クロマトグラフィー分析によれば、最終的なアルデヒドのenantio excessは85%以上にも達することがわかった。さらに、2-メチル-2-ブテナ-ル=シクロヘキシルイミンを塩基で脱プロトン化、アルキル化し、さらに加水分解を行うことにより、α位に四級炭素を持つ2-アルキル-2-メチル-3-ブテナ-ルが得られることを見いだした。またヒドラゾンををモノパーオキシフタル酸マグネシウムを反応させることにより、α位に四級炭素を持つニトリルが好収率、高選択的に得られることを見いだしている。絶対配置については、立体配置が既知の2-シアノ-2-メチル-3-フェニルプロピオン酸メチルに誘導することにより、(R)-体であることがわかった、これらの結果をもとに不斉誘導機構についても考察した。
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