研究概要 |
本研究では、当初の目的に従って逆の極性の置換基を同時にオレフィン炭素上にもつ新しい化合物を合成し、(1)これらモノマーを用いた高分子の合成とそのキャラクタリゼーション、ならびに(2)生成ポリマーあるいはこれらオレフィンの二量体などについてそれらの熱解離反応の研究を行い、以下の成果を得た。 (1)まず、逆の極性置換基をオレフィンの隣接炭素原子上にもつ化合物として種々の桂皮酸ニトリルを合成し、そのラジカル重合反応性の検討ならびにポリマーのキャラクタリゼーションを行った。その結果、このニトリル類の中には大きな立体障害にもかかわらず単独重合するものもあり、立体的に嵩高い剛直な構造のポリマーを与えることを見出した。また、幾何異性体あるいは置換基の種類によっても重合性が大きく変化することもわかった。(Makromol.Chem.,Rapid Commun.,14,649(1993);Makromol.Chem.,in press)。さらに、逆の極性置換基を同一オレフィン炭素原子上にもつスチレン系モノマーをいくつか新しく合成してそのラジカル重合反応性を検討したところ、核置換基の種類によって重合速度が大きく変化するなど特異的な重合挙動を示すこともわかった(Trends in Polym.Sci.,1,361(1993);第42回高分子年会(1993年5月)、討論会(1993年9月)。 (2)これらキャプトデイティブ化合物の重合から得られたポリマーの熱解離反応を比較研究したところ、比較的低温でも容易に解重合し、モノマーを再生することを見出した(Makromol.Chem.,in press)。また、キャプトデイティブ置換二量体あるいはオリゴマーの重合触媒としての機能を速度論的に調べたところ、スチレン、メタクリル酸メチルなどのモノマーの他、酢酸ビニルなどについても有効な重合開始剤となることを認めた(Polym.Int.,32,83(1993);Makromol.Chem.,194,2719(1993))。
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