研究概要 |
本研究では,側鎖型高分子液晶の化学構造と液晶形成能に関する基礎的研究のほか,イオン相互作用と水素結合を利用した自己組織性の発現について検討した。 既存の研究からは,側鎖型高分子液晶のスペ-サ長が長いほどスメクティック相の形成能が高いものと考えられているが,末端鎖長が長い場合にはこの規則には従わなかった。配向遷移が容易で液晶形成能が高い側鎖型高分子液晶を得るためには,スペ-サ長と末端鎖長を適切に選ぶことが,今まで一般に考えられている以上に極めて重要であることが分かった。 イオン基もつ側鎖型高分子液晶とそのモデル液晶化合物を合成した。モデル液晶化合物ではイオン基の導入によって液晶形成能および液晶相の熱安定性が向上した。また,イオン基の基板表面への物理的吸着の効果によって,モノドメインの液晶配向が形成された。側鎖型高分子液晶においては,イオン基をどの構造単位中に導入するかによって,その効果が顕著に異なった。高分子骨格主鎖,スペ-サ,メソゲンコアヘイオン基を導入したが,骨格主鎖中にイオン基をもつ系が最も液晶形成能が高く,配向遷移が容易であった。モノドメインの液晶配向はモデル液晶化合物と同じようにイオン性骨格主鎖をもつ側鎖型高分子液晶において,容易に形成された。 水素結合の利用が側鎖型高分子液晶の液晶形成能を向上させ,配向構造を安定化させることを明らかにした。特に,骨格主鎖とメソゲン側鎖基末端との水素結合が,スメクティック相の層構造の形成と安定化を支配することを見いだした。
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